★拍手お礼・ロイ祭り★

6月1日はロイの日だな〜そう思って。
あれ? でも…それじゃ
6.10〜6.19までって全部「ロイ…」じゃないかっ!
そんな煩悩が生んだのが下のお題です。

「かってにロイ祭」

6.10 → 「ロイ…お(願い)…」
6.11 → 「ロイ…ぃ…」
6.12 → 「ロイ…にぃ?」
6.13 → 「ロイっ!…見…っ」
6.14 → 「ロイ…して?」
6.15 → 「ロイ!?ごめっ…」
6.16 → 「ロ、イ…無(理)…」
6.17 → 「ロイ?…なっ…!」
6.18 → 「ロイ…やぁ…っ」
6.19 → 「ロイ…ぃ…くっ!」


細かい設定とか考えずさらっと読み流しでGO!



<6.10>


「ロイ…お、ねが…待っ…」
「うるさい!」

少年の嘆願なんて聞く耳持たずで、男が腕を引っ張っていく。
バンと激しい勢いで開け放たれたドアは同じ勢いで閉じられ
あまつさえ、カチャリと施錠の音までする始末。

「な、んで、…なに、怒ってんだよ?」
早足で引きずられ息も整わないが、このまま流されるわけには行かない。
「なんで、だと?反省もないのか?」
「反省て…だからなんで俺がはんせ…っ…ぅ…」

抗議の声はそのまま唇に飲み込まれて。
「ん、ぅ…んっ…」
「…っ!」
不意に体を離した男の唇から血が滲んだ。
「アンタが悪い!」
咄嗟に怒りに任せ噛み付いた舌先。
鋭さを増す黒い瞳に負けないよう叫ぶ。

「理由、言えよ。その口はそのためにあんだろ?」
「自分が昨夜何をしたか、覚えていないとでもいうのか」

昨夜…エドの思考がそれた隙にその小さな体を抱きかかえる。
「え…? ……わっ!」
放り出される体、ベッドのスプリングで跳ねる前に馬乗りに覆い被され
あっという間に両手を固定される。軍人の手際で。

「誰とだ?」
「何の話だよ!?」
「目撃者は私だけではないよ、鋼の」
あんなところで何をしていた、そう問われようやく思い至る。
「ち…違うって…あれは…あうっ!」
「最近構ってやってなかったから、欲求不満にでもなったか?」
言いながら急所を握られ悲鳴が上がる。
「ち…違うっていってんだろ、このばかっ」
それでも乱暴な愛撫はやまなくて、エドは半泣きのままイかされてしまう。
乱れひとつ無い服の、その中に。強引に。

そうして。

余りのショックに息も絶え絶えになりながら
それでも懸命に説明すればロイも幾分は落ち着いた表情で。
「…そんな荒唐無稽な話を信じろと?」
「どういわれても、そうなんだから、しかたねぇだろ」
自分を信じれないのかとばかり睨む、滲んだ視線を受け止め、溜息ひとつ。
「……やれやれ、私はどうにも君に甘い」
「なんだよ、それ」

甘いのは自分だとエドは思う。
勝手にこんな風に怒られて。なのに。

結局やきもちを焼いているのだと。
この男が、ロイ・マスタングともあろうものが、子供一人にムキになって。
そう思うから…。

「どうでもいいけど、このあと責任は全部アンタが取れよ」
汚れた服も、サボる軍務も、アルへの言い訳も。



昼下がり。
東方司令部の片隅での出来事。






<6.11>

「ロイ…ぃ…」

微かな軋みで満ちた空気を揺らす少年の声。
その響きにエドは知らず息を呑んだ。

自分の声がこんなに頼りなく聞こえた事はない。
ひどくか細くて、迷子の子供のよう。

ある意味それは正しいのかもしれない。
だって、いま、エドは…エドの感情は迷い子そのものだったから。


「ひ、…ぅん…っ」
「きついか?」
問いかけに必死で首を横に振ってみせて。
……けど、嘘なのはきっとばれてる。

初めての体に打ち込まれた熱い楔は
どうしても無理しか生み出さないというのに。


(な、んで…こんな…)
なんでこんな事になってるんだろう。
生理的な涙で霞む瞳、エドはぼんやりと考える。
なんで、って。
いや、それはわかってるけど、そうじゃなくて。


どうにも燻る感情がわからず過ごした数ヶ月。
やっと『恋』と名前をつけたそれは、
告げた途端に灼熱の抱擁にと変換して。



「好き」がそのままこの行為に繋がるロイに、戸惑う。


そうして、オトナなのだと…

そう思う事がいまだ初恋の自覚もなかった自分との差を
突きつけてくるようで…いたたまれない。


好きになって、告白して…。
手を繋ぐ『ときめき』すら知らないうちに
……一番深い所まで繋がれてしまって。

嫌なわけじゃ、けして無いけど、
熱のまま翻弄されて何も考えれなくなっていく自分が怖い。

「ロ、イ…っ、ね…ロイぃ…」
まって、まってまって。


口に出来るのはその人の名ばかり。
睦言のように繰り返す吐息。



そうして。
ずるいオトナはゆっくりと。
知り尽くした子供の葛藤を封じ込めていく。

ひとつ、またひとつ、と。
全ての枷をやさしいキスにかえて…。

 

<6.12>

「ロイ…にぃ?」
こっそりと忍び込んだ部屋に小さく声が響く。
返事が返ってこないのはわかってる。だってさっき出かけてたから。

いつものように庭木の枝を伝って近づけば、
知ってか知らずか鍵のかかってない窓。
(無用心なの…)
クルンと入り込んでいつものように片付ききらない部屋に安堵する。

だってそれは、さっきまで遊びに来てた彼女が
「ロイ兄の部屋」には入ってない証拠だから。
(…ったく、オンナったらしなんだから)
ぶつぶついいながら、だらしなく脱がれたパジャマを片付け始める。

大学に入って、同時に海外赴任になった両親が家を空けると
ロイ兄の生活は一変した。
高校まではエドのこといっぱい可愛がってくれて…
それは今でも優しいけど、そうじゃなくて。
『ロイくんももうオトナなんだから色々おつきあいとかあるのよ』
そんな風に言われても、いきなり一緒の時間を…
場所を奪われるのは我慢できなくて。

三日とあけずこうして忍び込み、片付けなどして部屋に戻る。
その位なら正面から会いに行けばいいと思うのだが
押しかけるのは嫌で、だからといって自分の事忘れられるのもいやで。
(…ロイ兄だってわかってて鍵閉めないんだから…自業自得だよな)
そんな勝手な言い訳で自分を納得させて。

「ロイ…兄。今日も、遅いのかなぁ」
ぽつり零れる言葉。
あんな風に女の人送った後はいつも遅い。
眠れないエドは窓から車の音聞いてるから、それは直ぐにわかる
「…なんだか、なぁ」

ずっとずっとお隣にいる『おにいちゃん』が
エドにとって特別になったのは、いつ頃だったんだろう。

ぱふん、とベッドにパジャマの上着抱えて転がる。
「俺…変だよなぁ…」
ロイ兄も自分も男で。他人で。
それなのにどうして一番近くに居たいんだろう。
そんな事、できっこないのに。

「ロイ…」
そんな風に、呼び捨てに出来る相手に嫉妬する。
だから、一人きり、こんな風に声に出しては見るけれど。
「ロイ、兄…」
そう呼べるのは自分だけで。
離れてしまうなら、せめてその場所から見つめていたくて。

「ロイ…兄の、におい…する」
ぐるぐる、慣れない事考えてたら…エドはそのまま眠りに落ちていった。



そうして。

暮れた部屋に帰ったロイは、ひとりベッドの前で逡巡する。
目の前には自分のパジャマにくるまって眠る愛しい子。
「……おまえ、食われたいのか?」
無用心にも程がある。

「なんで窓しめないのかも、…わかってないんだろうなぁ」


だって、不器用な二人の恋は…まだ始まってもいないから。




<6.13>

「ロイ…っ。見…」
「は…がね、の?」


カタン、と音がして…ふり返った俺の視界に入って来たのは
信じられないもの見た表情のロイ・マスタング大佐。

東方司令部、執務室。大佐の執務机のまん前で。

ああ、どうしよう。なんで、帰ってきてるんだよ。
アンタ軍議じゃなかったの?

いまさらどうしようもない、そんな八つ当たりばかりがグルグル頭を巡る。

そりゃ、驚くよな。
部下が…しかも男の俺が、自分の軍服抱き締めて
あまつさえ口付けてたなんて、さ。

だからって、そんな化け物見るような目で見なくったっていいじゃないか。
まぁ、仕方ないだろうけど。俺だってびっくりしてんだからさ。


「ああ、ごめん、これ必要だった?」
限りなく平然とした顔で手に持った青い軍服を差し出す。
心臓は早鐘みたいで破れそうだし、足だってガクガク震えてたけど
誤魔化す事には慣れているから。

だけど、敵もさるもので。

「ああ、すまない」
あの一瞬の動揺が治まるとにっこりと笑ってこっちに近づいてきた。
「かけていたつもりだが、落ちてしまっていたようだな」
ありがとう、とにっこりと思いもしない嘘を吐く。
ホント、アンタって悪趣味だ。

ばつが悪くて俯きそうになる視線を必死で上げ
近づく男を他人事のように見つめる。

今日イーストシティについたばかりでアルには悪いけど、
報告書徹夜で書いたら明日の朝には出発しなきゃだな。
ほとぼりが冷め、冗談ごとになるのは一ヶ月か二ヶ月か…

そんな事ぼんやりと考えながらつっ立ってたら
ふいにその腕ごと引き寄せられ、焦る。

「な、なな?…なに…っ」
「いや、そんなものにするくらいなら、ここに生身があるだろうに、とね」
引き寄せられ、胸に顔が触れそうになったところでそんな台詞。
笑いを含んだその口調に一気に顔が赤く染まるのがわかった。
Yシャツごしのぬくもりに、胸が痛くなる。

そうだよな。アンタはオトナで…軍人にはそんな趣味のヤツだっていて…。
余裕たっぷりの言動はいつも生意気な俺への意趣返しだろうか。
「……だから…や、だったのに…」
小さく呟く。けっしてロイには聞こえないように。

こんなヤツ、好きになったって…バカにされるだけなのに。

「……」
無言で腕を振り払い、身を離す。見透かされてる恐怖に。
多分、ニヤニヤ笑ってる…その顔を見たくなくて、
もう視線も上げれない。だめじゃん、おれ。

「ごめん」
一言ぼそりと。頭を下げ、そのまま踵を返す。
ごめん、好きになって。ごめん、変なヤツで。
「何故、あやまる?」追い討ちの低い声。
聞くなよ。瞼の裏、熱い。ばっかみてぇ。


「私はうぬぼれてもいいのかな」

え?

後ろからそのまま抱き締められる。
封じ込められる、全てを。


「同じ想いだと信じていいのか?」
耳元に落とされた囁きに…
俺は、全てをロイに預けた。




<6.14>

「ろい…し、よ?」

こんな甘ったるい声が自分から出てるなんて、
おそらくエド自身知らないんだろう。

「…エド…」

が、蜜のような誘いを前にロイは一人困惑していた。
「しよう…って、なにを、か、わかってるのか?」
「え?…だから、セックス」
あっけらかん、と言い放たれていっそう頭を抱える。
なぜなら。

「おお〜羨ましい誘いっすね」
「や〜だなぁ、にいさんったら露骨ぅ」
「いやいや、ここでひきさがったら男じゃないでしょう」
「おい、ロイ、丁寧にしてやらんとだなぁ…」
がやがやがや。

「………いったい、どいつの仕業だ?!」


大総統視察がらみの大仕事がひと段落で、
打ち上げと称してヒューズ宅に集まったのが、6時間前(らしい)
最終書類に追われたロイにその情報が伝わったのが1時間前。
「エドワード君も連れて行かれましたよ」
ホークアイ中尉の宣告に血の気が引きまくって20分で全てを終わらせた。

が、駆けつけて見ればとき既に遅く。

良心のかたまりのグレイシア夫人はエリシアちゃんと寝室に引き上げ
ただの酔っ払いの集団と化した男たちの中で
エドは「ジュースみたいなもんだから」と飲まされたカクテルで
おもいっきり悪い癖を出していた…。

それは。

「ねぇ、ね。ろいぃ…」
酒が入るといきなり甘ったれに変わると知ったのはいつだったか。
上目使いでしなだれかかり、心臓に悪い事このうえない。
これが二人きりならいくらでも、おもうがまま。むしろOKなんだが、
部下の前でいくら公認とはいえベッドシーンを披露する趣味はない。
ましてや、一緒になって騒いでいるが、弟は絶対に酔っていないはずで。
(そこまで無謀な真似はしたくないからな)

「ねぇ、ろい?どしてぇ?」
おれの事、もうきらいなの?
ほっとくと酒の勢いのままぽろぽろ泣き始める子供がいたりして、
ロイは溜息半分、その体を抱き締めてやる。
「ばかだな、わたしがエドのこと嫌いになるわけないだろ」
子供にだけ聞こえる大きさの囁き。
甘くおとせば、華がほころぶように、笑う。

(いつも、こんな素直なら…かわいいのに)
普段抑制しまくってるから反動が大きいのだ。それはわかってる。
だから、こんなときくらい、思い切り甘やかしてやりたいのに…。

「ろい、すき」
ちゅ。

抱き締めた腕の中から、伸び上がるようにキスされて
ロイの中で何かが切れた。


ぐい。
くったりともたれかかるエドワードをそのまま抱き上げると
すたすたとドアへと向かう。

「お!お持ち帰りっすか〜」
「いいな〜ぁ」
「あんまり無茶させちゃ駄目ですよ〜」
掛けられる野次を尻目に扉を開け、そのまま自宅へと向かった。

どうせ、何を言おうが結果は同じなら
恋人と幸せな時間を過ごして何が悪い
!!
そう思う程度には、ロイも煮詰まっていたので。



そして、二人が去ったヒューズ家では
「よっしゃ!これで明日はロイのやつ休みだろうから、
 二日酔いでもなんとかなるぞ〜。飲むぞ〜。」
「うをを〜、ヒューズ中佐。さいっこう!」

そんな会話があったとか、なかったとか。




<6.15>

「ロ、イ…ご、め…」
「何の話だ?」
わかりきっている謝罪を冷たく切り捨てられ、俺は言葉を失う。

いつもは頼もしく見える大きな背中。
拒絶された時、それは指先ひとつ延ばすことがかなわない壁となる。

先走ったのは、俺だ。
ロイの命令を聞かず、いけると踏んで戦いに飛び出していった。
それが…罠と気づいた時には、もう遅くて。

『ロイッ!』
目の前で血が飛び散った。俺を庇って、と気づいたのは数瞬あと。
血に濡れた腕でそれでも指を鳴らしてロイは背後の敵を倒し
俺は、俺たちは…事態を収拾させた。

さいわい肩を掠っただけのそれは後遺症が残る事もなく
傷が塞がれば軍務復帰もすぐだという。
だけど。

「ごめ、ん」
どうして俺は、こんなふうにしか出来ないんだろう。
いつもいつも、大事な人を傷つけて。

「エド…おまえ、わかってないだろう」
「え?」
「何を謝ってる?」
問われ言葉を選びながら、自らの愚を語る。
「命令、無視…して、単独行動とって…」
あげく敵の火線上に身を晒し、包囲網を突破される処だった…。
「…ふ、む」
黙って目を閉じ聞き入るロイの、眉ひとつ動くのが気にかかる。
「………だから…」

言い募る俺の言葉を遮り、ロイがゆっくりとふり返る。

「軍人としては合格だが…」
怪我のない方の指先で呼ばれ、近づけばそのまま抱き込まれて。
「恋人としては失格だな」
「なっ!?」

片手で胸元に抱きよせられキスを落とされる。甘い甘いキス。
怒ってたんじゃなかったのか?
思わぬ展開に俺はただ身動きひとつできず、朱に染まるばかりで。

「もっと、自分の身を大事にしてくれないか…」
そんな俺の耳元で囁くような声。
いつもいつも無鉄砲なことばかりして。
「いつでも傍で守れるわけではないのだから…」
「ま、守ってなんて、貰わなくても…」
「大丈夫だった、というのだろ?今までは…」
だが、それが幸運でなかったと、どうして言い切れる?
問われて視線が落ちる。

「けしておまえに力がないとは思わないが…」
だからといって安心できるものでもないのだ、と。

「……ご、めんなさ、い」
心配かけて、ごめんなさい。
その気持は、だって、わかる。俺だって同じだから。
そうして、ぎゅっと抱きつけば目に止まる真っ白い包帯。
「だけど、あんただって無茶すんじゃん」
それなら、俺の気持もわかってよ。
目の前でアンタが撃たれた時、世界が一瞬真っ赤に染まった。
「それは、仕方ないな、おまえが悪いんだから」
「なっ…」

私をこんなに感情的にさせるのはエド、おまえだけだよと
そんな殺し文句。
もう俺は何も言う事が出来やしない。

そうして、俺は、優しい言葉で、絡め取られていくばかり…。



<6.16>

「ロイ…無…っ」
無理、だと、思う。絶対。
「そうか?」
「無理無理、ぜぇぇったい、むり!」

だって、初めて目の当たりにするロイの…は、あんまりに予想外。
反則だよ、んなの。ぜってぇ、入んねぇって!!

なのに、当の本人。いたって平静な顔で俺に近づいてくる。
いや、そりゃもう、お互いすっぽんぽんでベッドの上なら仕方ないんだけど
…けどっ!

ひょんなことから両思いとわかって、
それなら何の問題もあるまいと連れ込まれたのが数時間前。

あれやこれやの言い訳は「照れ隠しかね」とばかり言いくるめられ
癪な事に手馴れたキスと愛撫で、それでもぼうっとさせられて、
あれよあれよと服を剥ぎ取る手際にムカつきながらも翻弄されて。
そうして、一回イかされて事に及ばんとしたトコで
………我に返った。

「全く、もう少し飛んでればかわいいものを…」
「可愛くなくって悪かったな!」
「いやいや、耐久性があるのはいいことだ。堕としがいがある」
さらりと吐く外道な台詞。

なぁ、アンタ、ほんとに俺の事、好き??

聞けば蕩けるほどのキスを体中に降らせて。
「こんな夢中になった事はついぞないな」
信じていいんだか、どうなんだか。

「じゃ、さ。ものは相談なんだけど…」
「却下だな」
「なんでっ!?」

んな、言う前から否定しなくても。

「この状況での『相談』など、聞かずとも知れてるからな」
どうせ、止めようとか言うんだろう、言われて首を横に振る。
「あのさ、俺が入れるってのは?」
情けない話だけど、どう考えてもそっちのほうがダメージ少ないだろ?
「ばかか、おまえは」
一刀両断。
「なんでっ?!」
「そんな台詞は一度でも私をイかせれるようになってから言うんだな」
言うなり前後上下が大きく入れ変わって…これは世に言うあの体勢。

「……耐久レース?」
「バカ言ってないで、銜えろ」
「ん、あぅっ!」

そうして?



聞かないでくれ。

どうせ、オレ忍耐力ないよ、ちくしょう。



数も忘れる程溶かされて結局頂かれてしまった我が身に
リベンジを誓うものの、その前に陥落しそうで悔しい。

そんなこと、絶対あいつには教えてやんないけどな。




<6.17>
 (注:女体化ネタです)

「ロイ?…なっ!?」
「ああ、失敬」

いきなり開いた仮眠室横のシャワールームのドア。

もう深夜に近いそこには絶対人の気配も出入りもないのを
確認して汗を流してたエドは、思いがけない闖入者に
その濡れた体を隠すのも忘れ固まるばかり。

一瞬遅れで傍のタオルを纏うものの、その焦り方はいかにも不自然で。

が。
おや、とばかりに眉を上げた陸軍大佐どのは
「鍵くらい掛けたまえ」一言いいおくと、すたすたと執務室にかえる足音。

「ちょ…ちょっとまてっ!」
ばたん、ばんばん!と、大急ぎで服を纏い追ってきたらしいエドの髪は
いまだ露を宿していてガス灯にきらきらと揺れる。
「なんだね、騒々しい」
「…っていうか、…アンタ、いま…」

言葉に詰まる。自分の裸、見なかったか?なんて…マヌケな質問。

「ああ、まさか君が居ると思わなかったので、悪かったな」
「じゃなくて…見、た…んだろ?」
いくらコイツが無能でも、ことそういう事に関して疎いとは思えない。
エドが言いにくそうに問いかければ、にやりと人の悪い笑みを浮かべ

「気にするな。私としてはもう少しグラマーでもいいが、そのうち育つさ」
「じゃなくて…え、えええええっ!?」

いきなり核心をすっ飛ばした台詞。
なんで、なんで、なんで?

「アンタ、…しってた、のか?俺、俺が…おん…」
「私を誰だと思っているんだね」
威張られてがくりとうな垂れる。
ええ、そうでした。
処女センサーでもついてるんじゃないかと思うくらいの、たらしこまし。
「相変らず失敬だな、君は」
どうやら言葉になってたらしい感想に笑って肩を竦めると、エドに向き直る。

「誰が便宜を図ってると思っているんだい?」
自由な服装、自由な任務。そう言われれば。
「ああ、気づいているのは私だけだから安心したまえ」

先回りされた回答。どうにもコイツには敵わないとエドは舌打ちする。
いったいいつ自分はそんなへまをやったのかと、悩む表情を
横目で見て胸のうち可愛いとほくそ笑む男に気づきもしないで。
「さて、疑問が解けたならそろそろ帰りたまえ」

なぜってまだ教えてやる気はないから。
アルフォンスと交わした交換条件。

「…わ、かんないけど…黙っててくれてありがと」
殊勝に頭を下げて出て行く姿に浮かぶ笑みを押し殺して。

「そりゃ、黙っているだろう?」おとす独り言。
危険は少ないほうがいい。
誰にもばれないよう誰からも守ってやろう。それが契約。


ロイの口から楽しそうな呟きが零れる。
「はやく賢者の石を見つけたまえ、エドワード」


そう。
はやく、この手に落ちるために…。


<6.18>

「ロイ…や…っ…あ、あ」



「嘘はいけないな、こんなに悦んでいるのに」
言われゾクンと肌を駆け上がる快楽に、エドは身を振るわせた。
そうして、その浅ましさにいっそう恥じ身を捩って耐えようとする。

その様にロイは湧き上がる苦い思いをかみ殺す。
手続きのような通過儀礼のような拒絶と否定。

素直ではないこの少年を恋人のように抱けるのはいつの日なのだろうかと。


『俺は人を好きになったりしちゃいけないから…』
それなのに想いは勝手に育ってしまってと泣いた夜。
おそらくはもう記憶にないだろうその日が二人の契約の始まり。

誰よりも潔癖なコドモは誰より自分の罪が許せずに。
育つ…体も、心も、情欲も。
弟から奪った自分が持つもの全てこわしたいのだというように。

身食いする馬。ひたすらに自分を貶める日々。


『罰なら私が与えてやろう』

そう告げるしかなかった。
見つけたのは、生かしたのは自分だから。
苦しまなくては耐えれない心にギリギリの愛を隠した凌辱を。

「ひ…っあ、ああ…ぅ…」
「どうした?まだこんなもんじゃないだろう?」
「う…く、あ…っ、ぁ…」

縛られようがどんな奥まで暴かれようが、否は言えない。言わない。
それがいっときのエドの贖罪。
喘ぐ喉が呼気以外何の音も出せなくなるまで。

言い訳を与え痛みを与え苦しみと喜びを与え…。

何もかも考えたくないなら、真っ白になれるまで追い詰めてやろう。
意識を失い倒れるように闇に落ちるまで貪ってやろう。


そうして。

すこしずつ混ざりゆく愛という名の毒に犯されて
ふたり、泥にまみれ救われるまで…。

ふたりで。

<6.19>

「ロイ…ぃ…く…。イっちゃ…っ」
叫びより早く深く体を落とされてエドの口が悲鳴の形に開く。

「や、あああっ…」
ロイの上に座らされた格好で、仰け反った背から
快感に隠しきれなくなった黒い翼が、ばさっと大きく開く。

「全く、我慢の聞かない体だなぁ」
のんびりと、まるで繋がった情欲の光景などないかのように
黒髪の男が笑う。
「し…っ…かたないだろ?」
息を切らしての言い訳。
飛び散る汗も男の腹部に撒き散らした白濁もきらきらと蝋燭に揺れて。
「ロイのエナジーは誰のよりも美味しいんだから」
そう口を尖らせるさまがなんとも可愛らしい。愛しい淫魔。

「そうだな…ああ、すっかり傷も治ってきてるじゃないか」
さすがインキュバスだと、さっきまで血を流してた脇腹を撫でる。
そこはもう、ピンクの肉が盛り上がりすっかり綺麗に塞がって。
「あ、んたの…オーラ強いから…っん、んぅ…」
言いながら突き上げられ息が止まる。

「まったく気をつけなきゃ駄目だろ?」
「だって…だってあんなとこに…十字架があるなんて…」
しかたないじゃないか、エドだってビックリしたのだから。


程よく都会化した街は、
妖かしや悪魔といった存在を希薄なものとした代わりに
そこに存在する人々の信仰や神の象徴までわかりにくくしてしまってて。

気持ちよく夜の空を散歩してたエドが
ふいと曲がった先、いきなりビルの端から伸びた十字架に焦った時には
もう手遅れなくらい近づいてた。

半分天使の血が流れてるエドだったから、辛うじて逃げられたけど
まるっと悪魔だったらやばかったかも。

「しかし、おまえ教会とかいけるじゃないか」
「ああいうのは、象徴だからね。ようはそこに集まる人の思いなんだよ」

ものすごく強く魔を否定してた。
とっても小さな場所なのに。
「そりゃ、厄介だな…」


「……ロ、イ…」
「ん?」
繋がったまま考え込んでしまうロイにエドは不満を漏らす。
きっかけはそりゃエナジーだけど、始まってしまえば満足したいのが本音。
「ん、ん…」
自分から腰をゆっくり浮かしてギリギリまで抜いて…ストンと降ろす。
深く繋がったまま今度は前後へといいところにあてるように動けば
「っ!」
途端勢いを増すロイの熱。一瞬ひそめた眉もいとおしい。
「ロイ、ロイすき。もっとっもっとちょうだい?」
覆い被さり首にしがみつく子供のような仕草と裏腹な肉体。

「…ふ、ん。私を煽るか、いい覚悟だ」

にやりと笑って体勢を入れ替えるロイに、
エドの真っ白な腕が回されていく。


そうして始まるいつもどおりの、夜。












★おまけ★

以下は6/16(ロイ…無…)のお題で書き始めて
あまりのRに、拍手にはまずかろうと断念したものです。


「ロイ…無…っ…あ、ああ、っ…ぅ」
無理…と続けようとした言葉は喘ぎ声に取って代わられる。

「どこが無理なんだ?
 全部上手に飲み込んでるじゃないか」
布で塞がれた瞳では、いったい何が起きているのか見る事も出来なくて。
ただわかるのは…
大きく割り開かれた足の狭間で冷たい何かが自分を犯している事だけ。

「ひ、ぅ…っ…や、やだ、なに?…こわい、怖いよ、ロイ…」
涙で濡れた布は張り付いて、いっそう視界を失わせるばかり。
くちゅん、と湿った音がしたと思うと、俺の中の圧迫が増えて
「っあ!…あ、ああ…も、無理…」
入んないこれ以上。
硬い冷たい何か。幾つも幾つもゴム越しに感じる存在。

なんで?
俺、なにしたっけ?
なんでそんなに怒ってるの?

「ひゃ、あ、ああっ…」
体内でひとつの袋に収まってるそれは、まるで張り型のように俺を貫き
それでいて蠢く体内にあわせて自在に形を変える。


…ま、そんな感じで「異物挿入ネタ」になったんでまずいかと(笑
このあと無理に引き出されたり、産まされたり…大変な騒ぎの予定でした。
ちなみにはいってるのは『金魚玉』です。はっはっは。


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