「や…っ」

そのまま、覆い被さられてエドは否応無しに力の差を思い知る。



逸らされた喉、噛みつくように口づけられ音にならない悲鳴が漏れた。



(なんで…こんなっ)

不意の男の豹変にエドの頭はまだついていけない。

そうして、混乱はそのまま力の差となって現れる。魂の。

「やだ、…だめだ。やめろっ!」

暴れればそのままバランスを崩し、床にと二人転がり。

本来は影響ないはずの物質界が、そのままエドの『体』を押さえつけるものへと変わる。

(な、んで?!)

そうして、エドは理解する。ロイが『そう考えている』ことが影響しているのだと。

(なんて…精神力だよ。…畜生…)



ねじ伏せられる。この男に。そうして…?



「い、やだ…っ!」

本能的な恐怖がエドの心に巻き起こった。

と、同時に。


ばさり。

羽根が大きく広がりエドの体を浮かそうと強く羽ばたいた。

だが…。


「熱っ!」

羽根の先に激しい痛みを感じ、エドは慌ててそちらに視線を飛ばす。

視界の端、白い羽からぽとりと落ちる真紅の液体。

それはロイの体から流れ出た、紅い命の欠片で。

「……あ…?」



アクアヴィータ。



命の本質に近いそれは霊体である存在にも強く影響すると聞いた事がある。

『だから死者を導くのは高位の天使でなければ危ういのだよ』

『危うい…って、いったいどんな風に?』

好奇心に駆られ、以前、天使長にそんな質問をした。

答えは返されなかったけれど…。

だけど、この状況でそんなこと、知りたくなかった。





「なるほど」

エドの表情から何かを読み取った男は面白げに笑うと

組み敷いた体の上から伸ばした掌を己の血溜まりにと浸した。

「血は苦手とみえる」

「いっ!…きゃ、ああああ、あっ!」

真っ赤な掌が白い羽の付け根に血の刻印を描く。


と、微かな白い煙とともに羽根の一部が溶け、

そのままエドを床に縫いとめる楔へと変わった。


そうして、同様にもう片方。




初めて受ける衝撃と痛みにエドはもう、声も出ない。

天使を床に繋ぎとめるとロイはゆっくりと立ちあがり、楽しげに怯える子供を見おろした。



真白の羽根に紅き楔の堕とされた天使。






「ど…して、こんな…酷…」

「さて…と、これで逃げれまい。問題は男か女か、だが…」

エドの言葉など耳に入らぬように、ロイがエドを真直ぐ見つめ問いかける。

「おまえ、性別はあるのか?」

「え…」



性…それは肉体を持つものの感覚だ。

霊体には『よりどちらに近いか』はあれど、正確な区別は存在しない。

エドの知る限り生殖を必要としない天界において、交わりは魂の交歓であり

相手によって変化する相対的で、ある意味不安定な要素なのだ。


だけど、そんなこと…どう答えればいい?



黙り込んだエドの態度を反抗とでもとったのか、いっそう残酷な笑みを浮かべ男は呟いた。

「まぁ、どちらにせよ大した変わりはないか…」

言葉を区切り、エドと目を合わせると口元だけで笑ってみせる。

「抱く私には関係のないことだ」

その宣言にエドの瞳が再び凍りついた。





          ◆ ◆ ◆




「やぁ…、ぅ…」

身じろぎしか出来ない体をゆっくりと大きな手が這い回る。

熱い指先が触れる端から、体を覆っていた布が薄くなり立ち消えてゆく。

男の精神がエドを侵略していく、そのままに。

「なるほど、便利なものだな…天使とは」薄い笑みを含む低い声。

実体を持たないがゆえの安定と不安定を即座に理解し、

ロイはエドから全ての覆いを奪い去る。

状況判断と適応性に秀でたロイにとって、この行為は新しいゲームのようで。



露わにされる肌。

感じない筈の冷気を感じ、エドは微かに身震いした。



「ああ、胸じゃ…まだ、どちらなのかは判らないな」

言うなり、ロイはふくらみの薄い胸にそっと舌を這わせる。

「ひっ」

初めての湿った感覚にエドの体がびくんと跳ねた。

冷たい。なのに、触れていった跡がじんじんと熱い。

「本当に綺麗な肌だ。ここも処女のように…淡い色で」

「う、あぁ…っ!」

言葉とともに薄桃色の胸の飾りをグイと捻られ、背筋を何かが走りぬける。

「反応は…処女とは言いがたいようだが」

くすくすと笑われ羞恥に肌が染まる。

そんなこと言われたって、刺激されれば湧きあがるこの感覚は抑えられやしない。



「色づくのも…早いな。これだけでもう紅く熟れてるじゃないか」

脇腹を伝ってた舌がついと流れ、

悪戯な指に染められた紅い実を含んで吸い上げてきた。

「やぁ…っ!あ、ああ…ぁ…ううっ、く…」

逃げ場もなく晒された弱点に指と舌が絡みつく。きつく、弱く。




交互に嬲られれば、そこから溶けていくような甘い刺激が下腹まで滴り落ちていく。


大きく深く周囲ごと銜えこまれ、尖った先端を舌で転がされ…味わいつくされる。

次第に体に力が入らなくなり、刺激のまま喘ぎが零れる。

それはまるでロイの指で奏でられる楽器のように。


圧倒的な力に翻弄されたエドの瞳は潤んで何も映せない。

「ぃ…や…。あ、あああ…、もう…やめ、て…」

押し返そうとロイの肩にあてた手は、いまでは縋る仕草にと変わって。



「……さて、そろそろ、かな」




胸から離れた指が、エドの本当の秘密に向かって伸ばされていく。

「おまえ…名前は?」

「………え…?」

半ば朦朧とした天使が問いの意味を理解するより早く、

両足の間に大きな手が滑り込んだ。

「っ!…や、いやいやいや、だめぇ…っ!」

弾かれたように首を振り足掻くが、

圧しかかられ男の体が入り込んだ足は閉じる事も出来ない。

「『名前』だ、あるんだろう?」

「エ…エド。…エドワード…」

まるでそれを告げればこの悪夢が終わるというかのように、必死で口を開く。

だが、それは都合のいい幻想でしかなく。




「エドワード?」

呼んでくるロイの声に怪訝な響き。が、それもすぐに消え去り…

「名前は男か。さて、ここはどうなっているのか…」

「や…めて…。おねが、い…」

「この状態でやめたら辛いのはおまえじゃないのか、エド?」

楽しげに呼ばれる名前に、それだけでどこかが震える。

(や、だ…。なんで、こんな…)


「全部教え込んでやるよ、おまえに。人間のSEXを」


言いながら内腿を撫でていく熱い手に、ビクビクと足先までが跳ねてしまう。

「う…っ、うぁ…ん、ん…」

自分でも信じられない甘いあえぎ声。

……何が起きてるの?俺に。








「エドワード」

口に乗せた瞬間に馴染んだ感覚が巻き起こり、ロイは束の間躊躇する。


初めて会った相手なのに、どうして知っている気がするのか。

それとも、そういうのが『天使』の特質なのかもしれない。

心を許させ、救いを与えるための。

(馬鹿馬鹿しい)

自分に許しなど必要ない。救いの天使を穢して地獄に落ちるのもまた一興だ。

そうして己が楔を打ち込む先を目指して掌を滑らせる。が。

「……?」

指の落ちた先、そこには何もなかった。

いやあるのだ、ただ綺麗な肌だけが。



「なるほど、まだ何も知らない体というわけか」


男でも女でもない、無垢な精神。

それがそのままカタチとなって現れているのだろう。



(それならば、私が『女』にしてやろう…)

この体はロイにとっては粘土細工のようなもの。

喉に絡む笑い声。

ロイの考えがわかったかのように、エドの瞳が恐怖に曇った。




「…ここ、で私を受け入れるんだ、エドワード。…さぁ」

焔の指先が隠された場所を抉じ開けようとノックする。


「い、いや、嫌っ…」

「おまえに拒否できるわけがない」

女ならばあるべき場所に何度か指を滑らせる。最初は弱く、そうして次第に強く。

「あ、あ、ああっ…いや、だめ…だめ、だ…」

「そうか、そんな事もなさそうだが」

指先がしっとりと湿り気を帯びていく。滲み出る淫液。

「ほら、もう解れてきてる」



二本そろえた指先が、クリームを掬うようにエドの柔肌を抉ると。




「きゃあぁっ!…あ、あうぅっ…ん」

ずぐり…。体内から鈍い音が響く。


自分でないモノが入り込んだのを感じ、エドは声にならない悲鳴を上げた。


 

終わんないし!…ってか霊体S○Xってなんでも有りかよ(苦笑
このあたりとかアクアヴィータのくだりは捏造です、もちろん。
全てはロイエドのためのエッセンスだから、深く考えないように(にこ
さて後一回で終わ…らせたいです。切実!




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