ロイ×後天性エド子 新婚STORY


それすらも 幸せな 日々

              〜結婚式は錬兵場で 編




<1>

「うわ〜〜〜、よるな、よるなっ!」

「……ひどい言われようだな」



そんな風に憮然と黒髪の男は返してくるけど、わめいても仕方ないだろ。

どうやら昨夜の後遺症で動けない体、しかもオールヌード。

……な、俺にとって、仁王立ちで余裕の表情な成人男性は怖すぎる。

(しかもなんだって自分だけちゃっかり……。

 下だけとはいえパジャマ着込んでるんだ、こいつは!)



悪態つくのも当たり前。

だって、俺エドワード・エルリックは、ついこの間まで男で、

それが運命の、つーか真理ノヤローの悪戯で女の子に変わり。

ついでに言えば、本当に昨日『エディ・マスタング』になったばかりなんだから。



「そんな格好のまま床に転がっていたいというなら別だが…」

言いながら俺の抗議を気にも留めず『奥さん』と呼びはなった男は、ひょいとこの体を抱え上げた。

ついでに胸の小さなふくらみに微かなちょっかいもかけながら。

「ひゃあ、あうっ!」

「ほら、どうせ動けないんだろう?」

「う…」

原因はてめぇだろうと叫ぼうとして、墓穴を掘ることに思い至り黙りこむ。

ついでに告白するなら、昨夜出しすぎた声は案の定掠れてたし。



ベッドに体をも一度戻されたところで、ぐるぐるとシーツを巻きつける。


とにかく、この相手の前で裸で居るくらいなら、

ライオンの檻に生肉持って飛び込んだほうがましなんじゃないか?

じと目で見上げる俺を余裕の笑みで見下ろしてるのも腹が立つ。

だああああああっ!



「……やめた、やめた〜っ!やっぱ無理、俺、結婚なんてできねぇよーっ!」

叫んだのは正直な気持ち。

この、ロイ・マスタング相手に毎日毎晩…暮らせって?! ぜってぇ、無理!!


「なにをいまさら。結婚許可証に大総統の承認もおりてるんだぞ。

 いったい何が気に入らないんだね? 昨夜はあんなに激し……」

「わーっわー、わーっ!!」

立て板に水、とばかり落ちてくる言葉に子供のように大声を出すことで反論する。

「言うなー、言うなあああああぁっ!」



あんな、あんな格好で。この男の腕の中で。あんなふうな声上げて……。

思い出した瞬間、ボン!と音がしそうな勢いで頬が熱くなる。



「…全く、わかりやすいね、君は」

くすくすと含む笑いが癪に障る。

「う、うるせぇ! と、ともかく忘れろ! 俺も忘れたから!!ってか、あれは、俺じゃねぇ!」

「ふぅん。それじゃ、思い出させてあげようか?」

「う、え?」


一瞬で変わる空気。

俺は自分の失言を悟ったが、時すでに遅く……。



『にこり』が『にやり』に変わったかと思うと、ベッドがもうひとり分の重みで、軋んだ。



           □ □ □


そんなわけで、翌日アルフォンスがハボック少尉たちと大佐の家に現れた時には、

俺はもうしっかりと『結婚します』と体で誓わされていて。



「おや、よく来たね」

なんでか機嫌よく笑う大佐の目の前には同じく満面の笑みのアル。

ついでに言えば夜行を乗り継いでやって来たらしいウィンリィが(畜生、誰が呼んだんだ)

「おめでとう、エド!…突然で、びっくりしたわ〜」なんてその横で微笑んでいた。

「おめでとう、兄さん!あ、ごめん、姉さんだね、もう」

(おまえか? アルフォンス……)

その満面の笑みに何かを確信しながら、それでも俺は最後の『藁』にしがみつこうとした。

「な、なんで…おま、え…。え?」


大佐にはばれるなとか、気をつけろとか言ってたのはついこの前だよな?

一体、何なんだ、この変わりようは…。

不審な目を向ければにっこりと。


「うん、僕も色々考えたんだけどね。遊ばれちゃ困るけど、このくらいしっかり世間に承認されるなら

大佐の奥さんってのは結構お買い得かと思って、さ」

「そうそう、なんせ、大総統のお墨付きっすからね」

「だいたい兄さんが姉さんになったところで、その辺の男に嫁にいけるとも思えないし」

そう思えば、いい縁じゃない?…きっぱり言い切られ、

いくつになっても読めない弟の思考に俺は心でがっくり肩を落とした。



<2>

「しかし、アンタがお嫁さんとはねぇ…」

「あ、あはははは…」

しみじみと呟くウィンリィに

「なんでOKしたか」とかは聞かないでくれると有難いんだけど、なんて思ってたら

そんな事すっ飛んで、話はもう結婚式をどうするかなんてとこまで行き着いていた。

しかも、全てのことは当人たちが知らぬ間に。



「えええ!? うそっ!」

「嘘なんかついてどうすんだよ、んなことで」

知らなかったのか、と呆れた顔でハボック少尉がアル達と顔を見合わせる。

「…しかし、その話は私も初耳だな」

こちらは俺とは正反対に落ち着いた口調での大佐の言葉。

って言うか、心なし面白がってる響きが聞きとれてちょっとムカつくかも。



「でも、もうすっかりセントラルではこの話で持ちきりでしたよ?」

駅に着くなり耳にしたとウィンリィが口を開けば

「そうそう、あのマスタング大佐がついに年貢の納め時だとか」

「僕が聞いたのはヒューズさんからで、司会はまかせろ!って…」

アルと少尉が援護射撃張りに情報を撃ち込んでくる。

はっきりきっぱり不意打ちの俺は、すでに満身創痍に近いかも。

「な、なんで…そんな、話に……」


だってそうだろう?

一昨日、それも夕方近くに大総統と話した内容が、

なんで今日になったら日時式場まで決定事項で広報されてるんだよおおぉ!?



「……なるほど、あの人なら面白がってやりそうだ」

ロイがしみじみと頷く、ってことは。もしかして、もしかして、だな。

恐る恐る見上げれば、さもありなんと幾分困った表情の大佐と目が合った。

「……大、総統…?」

「おそらくはな。さて、それでは逃げるわけにも行かないか。ハボック、式はいつだ?」

「え〜、だから、あと5日後です」

「ふむ、ちょうど『謹慎』あけ、ということか」

淡々と呟く男に俺は眩暈を禁じえない。ありえないだろ、だって。

「では、それまでに軍部主催の名に恥じない式の準備をしなくてはならんということか」

「そうなんです。だから、急遽ウィンリィに来てもらって〜」

「確かに、私は私の身辺整理と準備でそちらまで手が回らないだろうな」

「それに、やっぱりこういうのは女性の仕事でしょう?」

「俺達は業務こなしながら会場設営とかでてんやわんやですしね」

がやがやがや。



当の本人である俺、をすっかり蚊帳の外で会話は展開し

なにやら最後にはパン!と手打ちの音まで聞こえる始末。



「いーかげんにし…」

「はいはい、わかったから。あんたはこっち」

「ぅえ、えええ?」

いい加減切れた俺が怒鳴ろうとした途端、

ウィンリィとアルが俺の両腕を左右からグイと掴むと、ずるずる部屋から引きずり出していく。



「じゃ、当日までお預かりしますね」

「おや、それは寂しいことだ」

「だめですよ、大佐に預けといたら式までに妊娠しちゃいますから」

「ははは、それはひどいな」

さらりとさわやかにとんでもない会話を交わす弟と…婚約者に頭痛を感じながら天を仰いだ俺は、

扉が閉まる瞬間投げかけられた言葉に、更に深くため息を吐くこととなった。



「ああ、そうだ。私はミニスカが好みだな、鋼の」

(いっぺん、死んでこい!)





そして4日後。

俺は、世の女性の『美』に対する根気と忍耐と執念を、まざまざと思い知らされていた。

……というと、言い方は悪いかもしれないが。が。

「なんで、こんなにいろんなコトしなきゃいけないんだ〜〜っ!」

と言うのが、偽らざる俺の叫びだった。



ウィンリィと、途中で合流したグレイシアさんに連れて行かれたのは

気恥ずかしくなるほど煌びやかなの入り口の、あ〜、いわゆる『ブライダル専門美容室』ってとこで。

「まぁまぁ、こちらがマスタング大佐の?」

穏やかな、でも有無を言わせぬ雰囲気のマダムなんちゃらに

ぐいぐいと引っ張られ、俺は広い個室に連れ込まれた。

そこで一様に微笑んでいたのは5人の女の人。

そして。



「ぎゃああああああっ!」

数分後、俺は自分の下着姿に悲鳴を上げた。


「大丈夫ですよ、女同士ですから恥ずかしがらずとも」

「ええ、私たちもプロですからご安心ください」

「でも、うらやましいですわ〜」

「ええ、マスタング大佐がこんな情熱的な…あら、失礼……おほほ」

そんな台詞はたぶん、俺が何を恥ずかしがってるか誤解した所為。

だって、剥かれた俺の体には気づけばいたるところに、ロイの馬鹿が残した赤い痣がいっぱいで。

だけど、ホントのところ、俺はそれ以前に女の人に裸にされる状況事態にパニック寸前だった。


しかたないだろ、心のどこかはまだ健全な15歳の男子なんだからさ!



そんな俺の心の叫びなど無視して、全てはどんどん進んでいく。

一瞬のうちに、いろんな場所のサイズを測るべく体中にメジャーが巻きついたかと思うと

一人がさっとカーテンの向こうに消え、指示を仰ぐ声が聞こえてくる。

「ええ、これでいいわ」

「レースはこっちで。いくらかかっても構わないとマスタング大佐はおっしゃってたから…」

「それなら、このデザインをこう変更して〜」

やけに愉しげなウィンリィたちの声。


ああ、どうしてこう、女ってお人形遊びが好きなんだ!!?



(ってか、俺は人形じゃねぇ!?)

思いついた考えに自分で突っ込む。……空しい。



その後は、パックだのマスクだのピーリングだのスチーミングだのオイルマッサージだの……。

蒸されて塗られた洗われて、なんだかかんだか揉み込まれ擦り込まれ、

あげく体中のシェービングをされて、俺はもうすっかり『おいしくどうぞ!』状態。

(このまま皿に盛られても、納得するね)

女ってすげぇ、と妙なことに感動と脱力した頃、やっと元の部屋に戻ってこれた。


「あら、エド…じゃないエディ、すっかり綺麗になって」

ウィンリィ……語尾にハートマークで叫ばれてもうれしくないんだけど。

「それでは式までの間、毎日ご来店くださいね」



にこやかに告げられる、それは俺には諦めへのファンファーレだった。



<3>

そうしてやっと、結婚式当日。

なんだか大佐は大佐で忙しいらしく、一回も顔を見ることないまま俺は控え室に座っていた。


5日足らずでお針子さんが必死で縫い上げたウェディングドレスは、純白のレースとシルク。


胸元は余り開けず少女らしさを残したデザインで、肩口に幾つもパールがあしらわれている。

が、反対にドレスの長さは大佐の希望通り膝上15センチくらいのミニで。

ぱっと見ではわからないけど

細かく不規則に何段ものひだが入っていて、動くたびゆるやかな波を起こす。

ただ後ろからは見えないように、腰から長くドレープを引く布が流れ落ちていて、

薄いレースのヴェールと重なり全体を落ち着いたイメージに纏め上げていた。


(……す、げぇ。まるっきり女じゃん)

髪をゆるく結い上げ、生花の薔薇とかすみ草を飾った姿は、自分で見ても中々のもので

俺は世の化粧技術全般に、錬金術を知ったときのような感動すら覚えていた。

(大佐、……なんていうかな?)

何しろ、仕方ないとはいえずっと会っていないのだ。

別に寂しいとかそういうんじゃないけど、なんか気になってるのは事実。

「まだ、少し時間、あるよな?」

時計を確認すると俺はこっそりと控え室を抜け出し、外廊下伝いに花婿の控え室にと向かった。

それが何を引き起こすかとか、考えもせずに。



         □ □ □



「…でよろしいのですか、大佐」

「ああ、構わないよ」

大きな窓越しに聞きなれた声が聞こえる。

(おし、ビンゴ!)



建物のちょうど反対側の部屋のベランダで俺はガッツポーズをひそかにとった。

外ではポン!ポン!と空砲が打ち上げられ、お祭り気分で皆は広場に集まり始めている。

その音にまぎれて小さく部屋に踏み込み、カーテンの陰に隠れる。

こっそりと覗き込めば、礼服を着込んだ大佐が横を向いて誰かと話してるところだった。


(あ、れ…ホークアイ中尉?)

式の当日だと言うのになにやら書類を抱えているのは、しばらく休んでいたせいだろうか。


(しっかし、ずるいよな)

確かに軍人だし軍のセレモニーになってるし、だけど。自分はちゃっかり礼服とはいえ軍服で。

(しかも……かっこいい、し〜)

欲目かもしれないが、髪を後に撫で付け真面目な顔してると三割増でいい男な気がして悔しい。

自分の姿見せたくてやって来たけど、ほかの人が居ると妙に恥ずかしい事してる気分。

(書類、終わったら大佐一人になるかな?)

間もなく式の時間だけど、一瞬でもロイだけになる時間はきっとあるよね?

そんな事考えてると、不意に部屋の中での会話が意識に飛び込んできた。

「しかし、意外でした。まさか結婚までなさるとは」

「ああ、私も驚いているよ」

(え?)



どきん!と鼓動が強く打つ。


確かに一度「愛してる」とは言われたけど、それは、その…そういうことの最中。

だから、それが本当なのかただのリップサービスなのか実は俺には確証がなくて。


思わず息を呑んで大佐の声を追う。



「そうですか? かなり大事にされてるとは思いましたが」

「失敬だな、私は別に同性愛者ではないよ」

「いえ、そういう意味でなく……」

「まぁ、いつかは年貢を納めねばならんし。鋼のとなら、退屈することもなさそうだしな」

軽く笑われて、ズキンと胸が痛んだ。

別に愛の告白なんて期待してたわけじゃないけど…なんだよ、それ!?




「エドワードくん!?」

ホークアイ中尉の驚いた声に、俺は意識せずに部屋の踏み込んでいた自分に気づく。


「鋼の?」

しまったという大佐の表情が、俺にそれまでの言葉が真実だと伝える。


怒鳴ろうと思った矢先に熱い何かが瞳の奥からこみ上げてきて、

俺はまっしろなベールを翻して、ベランダから外へと走り出していた。

 

<4>

「待ちたまえ、鋼の!」

背後から大佐の声。


だけど、とまれない。とまったら、泣いちゃいそう。なんでかわからないけど。


「鋼、の!」

「うっせぇ!」

パン! 手を合わせて一気に壁を錬成。

躊躇する隙に俺は建物から走り出る。



人垣が邪魔で前に進めない。


隙間を抜けて足元から転がり出るように進んだ先には……赤いカーペットが敷いてあった。

(げ! こ、これってヴァージンロード!?)


逃げたつもりで式場の、つまりは練兵場の真っ只中に入り込んでしまったらしい。

わあっと上がる歓声。でも、もう、引っ込みがつかない。

次いで、後ろで人波が分かれたかと思うと黒髪の男まで姿を現して。



「ほら、こっちへ来るんだ」

「い、や、だーっ!」

アッカンベーと思い切り舌を出すと、すそを翻して走り出す。

赤いじゅうたんの上をまっすぐに。

ひらひらとレースの裾たなびかせて花婿から逃げる花嫁なんて、前代未聞かも。




「待てといってるだろう!」

チッ!と背後で音がした途端、前方で小さな爆発が起きる。

「絶対、またねぇ!」 俺も再び錬成。どぅんと鈍い音とともにカーペットが捲くれあがった。



『おお〜っと、いきなりの、花嫁と花婿の意表をついた入場だぁ〜っ!』

走る横のスピーカーから

事態を理解してるのかしてないのか、能天気なヒューズさんの声が響く。


放送を聞き我に返ったように、軍の楽隊があわてて入場用のシンフォニーを奏で始めた。

が。



「誤解だ」 ドカーン!

「なにが!?」 ズドドド…ン!

「話を聞け、と言ってるだろう」 チュドーン!!

「うっせえ、てめえなんか知るか!」 ドゴゴォッ!



走ると同時に巻き起こる爆発音やなんやがあいまって、あたり満ちるのは凄まじい不協和音。

それに合わせるのように、赤いカーペットが千切れひらひらと中に舞う。


『これは、かつての対決を思い起こさせる演出か〜!?』

響き渡る派手な爆音。

しかし必死で辻褄を合わせようとするヒューズさんの努力が功を奏してか、

会場は意外なほど混乱が少ない。


ちらと視線を飛ばせば、俺達の会話を拾おうと集音マイクが何本もこちらを向いていた。


(くそ、どいつもこいつも……)

八つ当たりと自覚しながらもこのセレモニーや結婚に関わる全てが腹立たしくて、

俺はマイクのほうに向けて壁を作ろうと方向を変えた。

と。




「そこまでだ、鋼の!」

鋭い声とともにいっせいに周囲で小さな爆発が起こり、俺は白い煙に視界を奪われた。

「く……っ」

「ゲームーオーバー、だな」

煙が去った後、俺はしっかりと背後から大佐に抱き締められ、

悔しいかな身動き取れなくなっていた。







「はなせ! 離せってば、ばか!」

「離したらまた逃げるだろう?」

「当たり前だ、アンタなんか……」

「私なんか…?」

耳元で低くささやかれて、言葉に詰まる。


なんか自分ばっかり振り回されて。

それにこれじゃまるで大佐のこと、好きみたいじゃないか。


思い至った途端、突っ張っていた何かがぽきりと折れた気がした。





「……もう、いい。退屈しのぎの相手なら、他を探してくれよ」


怒りの激しい波が去って、俺は力なく呟く。

(そう、きっと俺、好きなんだ……)

でなきゃ死んだって、あんな事できやしない。この腕の中で…。





「言い訳させてもらえるかな、鋼の」

「好きにすれば」

俺が抵抗をやめたと知るや、大佐はくるんと俺を回して向かい合うように肩を掴んだ。



「退屈しのぎで結婚するほど私は酔狂ではないよ」

「……でも、俺のこと、そんな目で見てなかったって」

「ああ、そうだ。私には男…のような子供に劣情を持つ嗜好はないのでね。だが…」


男、と言い切りかけ、周囲が固唾を呑んで見守っているのに気づいた大佐が言い直す。

だけど、そんなこと俺は気づく余裕も無い。


だから? だから、なに?


視線をふいと上げて、今日初めて真っ直ぐこの男を見る。黒い瞳は物言いたげに揺れて。




「だが、君が軍を去り、いつかどこかの誰かのものになると思った時……我慢できなかった」

「……え?」


「君を他の誰にも渡したくないと思ったんだから、仕方ないだろう」



傲慢なまでにきっぱりと言い切られ、俺は言葉も出ない。仕方ないって、なにそれ。

なのに、目の前の男と来たらそんな俺をグイと抱き寄せ、臆面もなくこう言い切った。



「だから、覚悟を決めて私のものになりなさい」


「なっ…!ん、んぅ…ん」

返事をする隙も無く塞がれる唇。


二人のシルエットが重なった途端、この騒ぎを一人冷静に楽しんでいた大総統が合図を出し

楽隊がファンファーレを打ち鳴らした。






そうして。

このやり取りがマイクに拾われ街中に響いていたことを俺が知ったのは、

結婚式が終わって、すぐのことだった。アーメン。

 

【結婚式は錬兵場で 編 END】
(2007.10.26)


WEB拍手で連載の後天性エド子新婚STORYです。
拍手ですから、あくまで軽くコメディで。
それにしてもバカップル過ぎます。恥ずかしい奴ら。

続きの「嵐を呼ぶハネムーン」はWEB拍手に掲載中です





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