【4周年記念  借金少年・番外SSS】

 

 

 


「あ、桜……」

上から視界を掠めた白い花びらに気を取られ、ふいと目をとられ

たちどまり横を向いたら斜め上からそのままキスが降ってきた。



花びらが掠めたような柔らかなキス。

「なっ……」

なにするんだといいたい言葉は

穏やかな笑みにであってしまえばそれ以上抗議の声にならず

ただくぐもった音となり俺の赤い頬に消えた。

確かに誰も見ていない家の庭で。

だからといってそこまで開放的になれないのは俺が子供だからだろうか。


「あいかわらず、すぐに赤くなるな、おまえは」

くすりと含み笑いを洩らされ、いっそう頬が熱くなるのがわかった。

「あんたは、年々大胆になりすぎだ」

照れたような真っ赤な顔じゃ説得力もないだろうがそれでもと俺は言葉を投げ返す。



出会って、好きになって、一緒に暮らして、1年。

すれ違って、泣いて、別れて、2年。

そうして、もう一度二人で始めて、もうそろそろ1年の月日がたとうとしている。

この人を知って4度目の、春。



ひとり生きようと足掻いていたあの頃には思えなかった幸せ。

時折。自分がこんなに恵まれてしまっていいのかと不安になるほどの穏やかな日々は

それでももう手放すには苦しいほどに自分の中に沁み込んでいて。


「ロイ」

「ん?」

呼びかければ小さく首をかしげ見下ろしてくる黒い瞳に、映る自分を見て安心する。

「ロイ」

「……」

何の用も無く、ただ呼びたいだけと気付いた男からは微笑みだけが返ってきて。

告げる言葉も持たぬ唇が、またひとたび、吐息を奪われる。



言葉よりも雄弁に降り積もる時間は、足元に散り急ぐ花びらのように

薄紅色の道を、ただ俺たちの前に敷き詰めていくばかり。




サイト4周年の夜に何か書きたくて、
独り言のようなエドの思いを綴ってみました。
一応設定はオフで発行した小説の
「借金を背負った少年〜」ですが基本的に
雰囲気で書かせていただきました。
甘い甘い二人ですVv




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