ゆるゆると、眠りの淵から引き出される。

ゆらゆらと、揺り篭のように心地良い揺らぎ。


エド…と、誰かが呼ぶ。耳に優しい響き。


(…ん、ん…や、だ)

気持いい。満ちたりてる、心も身体も。

(きもち、い…このまま…寝さ、せ…)

 


「エド、エドワード!起きるんだ」

「…っ!!」

背中を走る痛みと快感にエドは跳ね起きた。目の前に…逞しい胸。

膝の上に抱きかかえられ、両足は大きく割り開かれ男性の腰を間に挟みこんで……。




状況を頭が思い出す前に、今だ男のモノを突き立てられてる下半身がどくんと脈打つ。

「ひ?…ぁ、やあ…あん?」

はずみで締め付け、内部の灼熱を直に感じて…記憶が蘇った。そして…背中に感じる…違和感。

(こ、れ…もしかして…)

恐る恐る、ちろ…と見上げれば自分を抱くロイの顔はにっこりと笑っていて。

左手でエドの腰を支え、右手で……

(俺、の…羽根っ!??)

違和感の正体をここで悟る。手慰みに触られ続けてる…黒い羽根。

(ばれた?ばれた?ばれた、よな?)

さあぁっと血が引くのがわかった。だって、ニンゲンは羽根なんて、ない。



「エド…」

楽しそうにロイが笑う。…笑う…??

(普通…悲鳴あげる、とか…ののしるとか…)

これまでエドの正体を偶然見た相手は、神に祈ったり堕落させられたと泣き叫んだり…ともかく。

(笑ってるやつなんか…いな…かったぞ?)

もしやものすごく鈍いとか、鷹揚なヤツで深く考えて無いとか…。

ありえない考えにエドが取り付かれる前に、静かに爆弾は落とされた。



「なんだ、お前、魔族だったのか」



「なっ、なな、なんで??」

「しかも、この羽根の大きさってことは…さして上級でも無いわけだ」

「ひゃ、あ、ああぁん!」

羽根の薄い付け根を指で挟んでグリグリと弄られ、エドの背から淫靡な歓喜が体中に広がる。

「…この感度のよさ……。ふ〜ん、おまえ、インキュバスか?」

だけどなぁ、とエドの返事など待たず言葉が続く。

「そんな低級魔が私に近づけるワケ無いんだが…」

「あ?…ああっ…いや、ん…なにっ…」

羽根から降りた手が今度は尻尾を探り当て、まるで手淫のように愛撫を始める。

「きゃんっ!…ああん、あん、あん、んんっ」

「うん。この反応…。…締まり具合も…申し分ない…」

まるで実験でも楽しむかのようにエドの身体を弄りまわす、大きな手。





淫魔としての象徴はどこも弱点だ。だからこそ一番にソレを隠す事を覚えるというのに。




尻尾に気を取られてる間に、逆の手がエド自身を少しずらしたリズムで擦りはじめ…

快感に耐え切れずどちらに身体を引いて逃げようにも、

中心を串刺しにされてては腰を揺らす事にしかならなくて。


繋がった3箇所をいっぺんに、しかもバラバラのリズムで刺激されエドの脳はスパーク寸前。

「ひいいっ…あ、ああ、やだぁ。それ、やめ、てぇ…あ、あう…んっ」

内股がひくひくと痙攣し足が知らず持ち上がる。

いきおい、更にロイ自身を深く飲み込まされ、いまや繋がったところだけで支えられた人形のよう。

「や、あぁっ!死ぬ…っ…しんじゃうよぉ…」

「嘘はいけないな。インキュバスがこの程度で死ぬものか」

ましてや、私の性液を注ぎ込んだんだ…耳元で落とされた言葉がエドを束の間正気に戻した。




「あっ…あん、た…なんで、んな…に…詳し……」

もしかして、魔族なのか?

ふっと小さく耳元で笑われ蕾がキュんと締まる。ホントにこの声に、オレ、弱いみたい。…

「私は人間だよ。ただ…先祖が少しそういった方面の力が強かったらしい」

え? と、きょとんとエドが目を見開けばロイの手が止まって。




大好きな声で、夢のように語られる…昔語り。





マスタング家にかつて『魔法使い』と呼ばれた少女が居た。

高度な霊力と自然のエネルギーの一部を変換する力を持つ…幼い少女。

彼女はその力を見込まれ、村を…国を、異界から守り、多くの魔物を退けた。

しかし、その大いなる霊力は、また魔物にとっては極上の餌でもあった。

ある日、魔界の後継者と名乗る男が、少女の前に降り立ち……



「…少女は命かけてその魔物を一生封じ込めた。…それが私の曾祖母でね」


隔世遺伝というのか、その力の残滓がロイに受け継がれたという。

「だから…小さい頃からやたら、魔物や精霊といったものに纏わりつかれてな」

必要に迫られ曾祖母の書物を紐解き、大抵の知識は会得したのだ、という。



「……ただ、淫魔とはいえ、魔物と寝たのは初めてだ」

落とされる言葉が何でか、胸に痛い。


「…おれと、エッチしたの…ヤだった?」

目の前の男が特別なのは、なんとなくわかってた。まさか魔法使いの末裔だとは思わなかったけど。

だけど、エドが気になったのはそんな事じゃなく。

「……馬鹿だな。いやだったら、いつまでもこうしてるわけ無いだろ」

言いながらエドの腰を掴んで回し、秘孔のなか、自身の存在を主張する。

「あ、…っん。オレ…おれ…気持ち、……いい?」

「ああ、最高だ」

軽く告げられたその言葉に嫌悪感が無いのが、エドには嬉しかった。

「じゃあ、さ。…真夜中まで…抱いてよ」


嫌じゃなきゃ…。




そう上目遣いでお願いされて断れる存在などこの世には居なかったろう。


エド自身は気づいてなかったが、上と下から体内に注ぎ込まれた精エネルギーと

初めての行為で花開いた艶は最高級のインキュバスのソレで。

「真夜中まで…?」

「今日…ハロウィン、だ…からっ…あ、あん…おれ…扉、しまっちゃ…ぅ…」

言葉は言い終えることなくロイの口に消え。


エドは…ロイが望みどおりにしてくれる事を…体全部で、感じ取ったのだった。








そうして、時間は冒頭少し前に戻る。

「ひっ…あ、……っ…はぁ、はぁっ…ぅん…」

延々と言葉どおり続けられる営み。

既にエドの秘所は半分痺れ、どちらのものか判らぬほどの白濁が繋がる部分から零れだしている。

「あああ、あ、あ、…いいっ…そこっ…すご…」

「まったく、なんて淫乱だ。全部吸い尽くす気か?」

そういいながら、まだ声に余裕のある男も尋常な体力ではなく。

激しく打ち付けられるたび嬌声が上がり、グチっグチっと、泡立つ淫液の湿った音が響いた。


もう何度注いで何度飲んで何度達かされたのかもわからない。



それでも時計に意識がいったのは、さすがとしか言いようの無い本能で。

(11時…35分…)

「ね、ロイ…あと少し、で…あ!はぁああんっ…やだっ…そんなとこ…」

門が閉まるから…と言いかけた台詞はそのまま意味のない喘ぎに取って代わられた。

ロイが確信犯でエドを再び追いつめ始める。



「ロ、ロイ…だめ、だめだめ、…おれ…」

「…少し、黙って…感じてろ」

エドの最後の抵抗を封じ込むように、尻尾をきつく掴むと…

それを。

まだ大きいままのロイを銜えこみ、きちきちに張っている媚肉の…微かな隙間から

強引に射し込んだ。一気に。

「きゃあああああーっ!!」

汗と涙がエドの顔から流れ落ちる。

限界を超えた拡張に、それでも淫魔としての身体は血を流すことなく。黒い尾がずぶずぶと飲み込まれていく。

「は、ぁ…あ、あ…」

エドにとっては自分で自分を犯してるも同然の感覚。

広げられかき回されるのも、熱い湿った襞に包まれ絞られるのもどちらも自分で…

腰を回されながら、尻尾を尖った先ぎりぎりまで引き抜かれ突き刺され

触られない前が何度も震えながら白い涙を撒き散らすのに…萎える事すら許されない。

「も、も…許し、てぇ…しぬ…あ、あああ、ぅ…」



結局エドが許されたのは、もちろんすっかり夜が明けてから。








「……エド…わかったから…出ておいで」

白いシーツの塊りにロイが優しく声を掛ける。

返事の変わりに部屋を満たすのは、何とも切なげな子供の泣き声で。



「エード」

「…………」

「…出てこないなら、もう抱かないぞ」

ビクン、とシーツが揺れ、泣きはらした仔犬の瞳の少年がおずおずと姿を現した。

金髪から覗く黒い小さな角が、ひょこんと揺れる。

「まったく…そんな泣かなくてもいいだろう?」

「だっ…だって、ひっ…く…門、しまっちゃ…オレ…帰れな…っ」

う〜、と噛みしめた唇。大きな瞳にまたぞろ涙が盛り上がってくる。



「……エドは、そんなに私と離れたいのか?」



「…? え?」

思いもかけぬ質問にエドの瞳が更に大きくなる。

「魔界に帰るということは、そういう事だろう?」

そんな事、考えてもなかった。ただただ帰らなきゃ、と。



「だって…居場所なんか無いし…」

「ここに住めばいい。幸い部屋に余裕はあるし」

「だって…オレがいるといろんな事おきるかも、だし」

「この家は昔からそういう家だと思われてるからね。ひとつくらい増えても何てこと無いさ」

「だってだって…地上で暮らすなんて…ニンゲンの身体にしとくの凄い大変で…」

「エネルギーが要るなら、いつでも好きなだけあげれるが?」

「だってだって…だって…」

どうしよう、何だか凄くいい考えな気がする。この男と一緒に、暮らす?

「エドは私が嫌いかい?」

思い切り首を横に振る。だって、それだけは直ぐわかる。

「じゃ、いいじゃないか」

どうせニンゲンは魔族よりうんと早く死ぬのだ。

それなら自分が生きてる間だけでも、ずっとエネルギー取って…ニンゲンの事も研究して。

「きっとその方が魔界にいるよりエドの為になると思うが?」

弟くんに見直されたいんだろ?

ソレが最後のトドメ。

(そうだな、そんな…魔族の時間で50年足らずたいした事じゃないし…)

確かに淫魔として成長するには下界は格好の勉強場所かも。

エドは自分自身にそう言い訳して、こっくりと頷いた。

「わかった。じゃ、お前が使える間は居ても、いい」

「嬉しいよ」



シーツごと抱き締められた、エドはも一度うっとりと目を瞑った。

 













『まったく、旦那さまも人が悪い』

『あ〜あ、気の毒に。あのインキュバス』

「……人聞きの悪い事をいうな」

『だってねぇ…』


エドがすっかり眠りに落ちたのを見とどけ
ロイは地下の書庫へと足を運んだ。


老若男女…何人ものひそひそ声がするが、室内にはロイしか居ない。

『だいたい魔法使い…じゃなくて、<魔>使い、でしょお?』

『その上、なにが《寿命》なもんかね』

『そうそう。あんたのひい爺さんは、あの時捕まった魔貴族じゃないか』

『まぁ、人並みでは死なんわなぁ…』

『かっわいそ〜。あの子も、そのうち仲間入りかしら』

ひそひそひそ…聞こえよがしな囁き声。


「…余り五月蝿いと…この本のまま、燃やすぞ」

いいながら手にした本をパタンと閉じると、一気におしゃべりがとまる。


(まったく、あの婆さんも厄介なものを残してくれたものだ…)


魔が見え…支配し使役出来る能力と、彼女が封じた魔物たちの本。



いままで面倒でしかなかったソレだが、エドに出会って一気に変わった。

「ま、あ…全てこの為だったと思えば…感謝しなくてはならんかな」

初めて心から欲しいと思った存在。

普通のニンゲンなら出会うこともなかった『インキュバス』の少年。


「離しはしないさ…」

にっこりと笑うロイの瞳はそれでも優しくて。

捕らえられたのはどちらなのか、どっちが餌でどっちが獲物か。






この二人の恋は、いま、始まったばかり。

 

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や、やっと…おわったよ〜!
こんな長くする筈じゃなかったのに…つい楽しくて、手が。
さてさてロイの正体、いかがでしたでしょう?
まだこの二人の話はいくらでも続きます。たぶん。
ともあれ今回はこれで。
 

THE HAPPY END♪

 

なお、この話の萌えの発端であるRT嬢の絵(淫魔エド)は
「ILLUST」の宝物に置いてあります。是非どうぞVv


 

 

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