さらさら、と肌の上を暖かい雫が零れていく。本来、霊的な存在にちかい魔物には入浴など必要ないのだが、
このシャワーというヤツはエドのお気に入りだった。
身体がのびやかになるくらい暖かくて気持いい。
(そのうえ、この…ボディーソープの甘い匂いときたら!)
花とも違う下界だけの香り。
エドはうっとりと泡だらけの掌で自分の肩を抱く。
見たところ男性一人暮らしなのに、当たり前のようにセットしてある女性用のシャンプーやトリートメントにこのロイって男の日常が垣間見えてちょっとムっとしたけど、
そのおかげでこんな気持良いから…我慢しよう。
ほとんど辻褄があってない事を考えてたら、背後の扉がいきなり開き…
噂の主が姿を現した。
「…おそいから…倒れてるかと思ったよ」そんなこと言いながら背後から泡だらけの裸体を抱き締めてくる。
「そ、んな…。あ、ばか、ダメだって…あんた濡れるだろ?」
「もう濡れてるさ」
心配を、明らかに性的な含みにすり替えて耳元でひくく笑われれば。(うわっ!)
どくん!と、隠しようもなくエド自身が起ち上がる。どうしようもないほど、好みの、声。
「あっ!…あ!あ、ん…」
体中覆う泡のまま、後ろから両手全部であちこち撫でられ声が出る。不意打ちの愛撫。
(い、今の俺の声??)
これまで愛撫はする側でされた事なんてなかったから…これが普通かどうかもわからない。
だけど、なんとなく唇をかんでしまうのは男としてのプライドか、インキュバスとしてのプライドか。
「……っ……ぁ…は……」
「声を殺すのは…可愛くないな」
「〜〜〜っ!!」
言いざま、白い泡から尖って覗く乳首をきゅっとひねられ、エドは言葉もなく背をそらす。
結果…更に胸を突き出す格好となり、今度は日本の指で押しつぶすように捏ねられた。
「あああん、…あ、ハァ…いや、あ…あ」
腋の下から胸を弄る腕の支えが無くちゃ、崩れてしまいそうな足腰。
初めてなのに…こんなことされた事無いのに。与えられるキツイ刺激に順応してしまうのは淫魔の性なのか。
どんなことされても次の瞬間には快感にすり替える体が、とろりと先走りの蜜を零す。
(…だ、めっ!)
自分が先にイってしまってはエネルギー失って、人の姿を保っていられなくなる。
(先に…こいつの…飲まなきゃ……)
伸ばした手の先に当たった蛇口を必死に捻れば、ざぁっとシャワーが二人を濡らしロイの愛撫が止まった。
「だ、め。…俺から…」腕の中で身体を捻るとロイを上目使いに見上げ…濡れたシャツの上、指を滑らせそのまま跪く。
目の前に男の昂り。布を押し上げてるそれをファスナーを下げ自由にしてやる。
「……おっ、き…」
自分のとも…多分アルのとも違う、大人の男のソレ。
クス、と笑いが落とされたが、気にする余裕もない。ぺろりと舐めればそれだけでふわんと身体が暖かくなる。
(う、わぁ…極上…)
両手で抱え込みキャンディのようにぺろぺろと舌を這わせる。先から滲む淫液を舐め取るように。
「…エド、はじめてか?」
「え?ああ、うん。男相手は初めて…」
夢中になってて、何と答えたかも意識せぬまま答えれば、口の中でロイが質量を増したのを感じる。
「んっ?!…んん、く…」
グイと喉奥まで突きこまれ視線をあげれば、頭を抱えて前後に動かされ口淫の手法を教えられる。
「もっと、口全体使って…そう、歯を立てぬように…上手いぞ」
本能的に吸い込みながら引き抜き…真空に近い締め付けを与えれば、微かに身じろぎする気配。
(う、っわ…楽しい、かも……これ)
やはり女と違って男はわかりやすい。自分の判断は正しかった。
悦に入ってロイ自身への奉仕を続けていると、知らず自分のそれまでずくずくと疼いてきた。
(…やばっ!早くしなきゃ…)
慌てて大きく銜えこんだのと、ほぼ同時に後ろ頭を固定され…
(ん、んん…ーっ!)
喉の奥深くまで男の欲望に貫かれ、熱い迸りを叩きつけられた。
飲み込む、なんてもんじゃない。流し込まれた…強引に。
「ん、コホ…っコホッ…」離されてずるりとバスルームのタイルに崩れ落ちる。
口の端から零れる白濁すら…ない。全部エドの中に注ぎ込まれたから。
「大丈夫か?」
たいして心配でも無い口調で男が問い掛ける。
「…う、…うん」
これほど自分がインキュバスであることを感謝する時がくるとは思わなかった。
どんな激しく扱われて快感に変換できる身体だからこそ耐えられたのだ、多分。
だけど、どうして?
「…あの、さ…俺のこと…きらい?」浮かんだままの疑問を言葉にしたら、思いがけず胸が痛んだ。…なんで?
「……今する質問じゃないな」
「……金ほしがったから?だから…軽蔑してるから、こんな風にするの?」
何でこんなこと聞いてんだろう?俺…
もう、こいつの精液貰ったし…凄く美味しくて…パワーだって今までと比べ物になんないくらい。
なのに、なんで?
「………そんな顔…する方が悪い」「え?」
「初めてだ、といったろう?」
頷けば抱き締められて。
「かわいくて…嬉しくて…我を忘れた。……私だってこんなことは初めてだ」
少しぶっきらぼうなのは照れてるせい?
「…うれしい…」
それなら、いい。
つぶやいたら、も一回ぎゅっと抱き締められて…エドは生まれて初めて眩暈を感じた。
なんだろう、これ?
おかしいな、俺、淫魔なのに。
こいつはニンゲンで…俺の獲物…エサなのに。
『はじめて』ばかりの夜は、まだまだ始まったばかり。
あれ?…あ、甘い…!?なんで??
お前らいきなりラブラブになってんじゃない〜っ!(汗
やばいよ、終わんないよ〜〜っ!!